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《2010.6月−5》

前の新作と、落差ありすぎ
【花サク (マニアック先生シアター)】

作・演出:山口ミチロ
12日(土) 19:35〜21:25 ぽんプラザホール 1800円


 全編状況説明という、ものすごくたいくつな舞台だ。
 作る側のおもしろさと見る側のおもしろさの違いをほとんど認識せず、作る側がおもしろければ見る側もおもしろいと思い込んでいる。
 たいくつなままに放置される者の気持ちも、考えてみてほしい。

 砂漠の果ての町は、旧人類が暮らしていた町。その旧人類の最後の生き残りである花サク。妻に子ができず、外から来た女に孕ませようとする妻と花サクの母。
 調査に来た学者がこっそり送った情報で、そこに国の調査隊が派遣されてくることに・・・。

 何とも理解しがたいちぐはぐさばかりが目につく舞台だ。
 砂漠を越えてきたはずの女は、よそ行きのかっこうで服も汚れておらず、散歩にでも来た風情。ほんとに、どこの砂漠だ! その女、旧人類と繋がるようなところの出身と明かされるが、それが熊本・五木?だから何なのよ!ほんとにいい加減だ。
 旧人類の遺跡とかぎつけてやってきた学者。調査途中にもかかわらず情報をリークして、お宝発掘団と化した遺跡調査団が押しかけてくる。だったらリークなどするなよ。しかも、遺跡はわからないように埋めてしまえだと。逆効果だろ。
 調査団と戦ってひとり死ぬ花サク。花サクの子を孕まさせられた女があとを継ぐんだが、この女、一族の長となる。花サクは死んでも他の人間は学者が調査団と交渉してやっと生き残る―で、幕。
 理解できないでしょ、これ。

 学者は旧人類のことをやや学術的なふうに説明するのだが、その学者も薄っぺらで行動は支離滅裂。
 若い女は学者が好きなのにウジウジで、色事には発展しない。そんなふうに何ごとも中途半端。
 結局はそんな状況説明が延々と繰り返され、ものすごくトロい展開。それぞれの人の思いがからむこともなく、何かを乗り越えることもなく、トロトロとただ流れて行くだけで、たいくつ極まりない。

 このような何も考えない作る側の押しつけはごめんだ。もう少し作劇術の勉強をして、こんなスカスカ芝居を満たす努力をするべきだ。
 それにしても前の新作「HIGAN」との差がありすぎる。上演前に脚本の質についての議論を、少しはしたほうがいい。

 この舞台は、11日から13日まで5ステージ。少し空席があった。


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