名著はわかりやすい。飛び込めばちゃんと応えてくれる。
内容は多彩だが記述はシンプル。心構えとしては、わたしのような能の素人が読んでもよくわかる。
ただほんとうのところは、能をそれなりに見につけた人でないとわからないだろう。世阿弥のころから能は変わって来てしまっているから、能をそれなりに見につけた人でもわからないかもしれない。
武士の式楽だったことで、能は芸能の奔放さをきびしい自己抑制の殻の中に閉じ込めてしまったのではないか。観阿弥のことばを書いた世阿弥のこの本には、芸能者で創造者だった観阿弥・世阿弥の自由なエネルギーが満ち溢れている。
読書会のあと大鼓の先生から感想を聞かれて、「『物まね』と『幽玄』の、ほんとのところがわからなかった」と答えたら、「それだったら、何も理解していないのと同じこと」と言われてしまった。