20席ほどの小さな劇場での、女優2人だけの出演者の1時間ほどの舞台。
2人の女優の個性と素直だがけっこう切れのいい演技はよかったが、脚本も演出も演技も淡白すぎて物足りない。もっと突っ込んだがいい。
福岡の若手劇団の舞台をあまり観ておらず、初めて観る劇団の舞台は久しぶり。
この舞台は、「劇団カミシモ 実験劇場2」と銘打たれていて、開演前の観客の投票によってその日上演の内容が変わるというもの。3つの項目について、3つの選択肢から選んで投票する。
ただ観客はほかの回を観ることはほとんどないから、その差は劇団にしかわからない。それでは観客向けの趣向とはいえず、あまり意味がない。むしろベストなものを最初から作りこんだほうがいい。
構成は、5分〜10分のコントを繋ぎ合わせた作品。
猫と小鹿が鏡の後ろの世界に行くというストーリーらしきものはあるが、それはかなりラフで、それぞれのコントは自由に作られている。
最初の「恋する主婦」が軽くテンポよく進んで終わると、いったんリセットされて次のコントに移る。それを繰り返して展開していく。その中で同じキャラが幾度か登場するし、時に役を入れ替えていたりする。
そんなふうで、アイディアとしては悪くはないのだが、全体的に淡白で喰い足りない。
それは、ひとつは脚本の問題で、コントのひねりの切れがいまひとつ悪く、軽く匂わすだけでサーッと流してしまうこと。もっときちんとした表出があったがよい。
もうひとつは演技で、互いの表面をサラーッと撫でるだけで絡まず、ほとんどコミュニケーション不全なのに、テンポよく進めようとするから上滑りになってしまった。止まる、溜めるなど、もっとメリハリをつけたがよかった。
そんなところはあるが、ふたりの女優は生き生きとして魅力的で、素直で奇をてらわない演技には好感が持てた。ネコミミとかエプロンとか、ちょっとした小物で役をわからせるセンスは悪くない。
気になったのは、作・演出が「劇団カミシモ」となっていること。集団での創作だったとしても、ここは個人名の連名にすべきだ。
この舞台は9日から11日まで5ステージ。20席ほどの客席は、ほぼ満席だった。