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《2010.7月−16》

原田伸雄の舞踏を、久々に
【肉体の劇場 (青龍会)】

構成:原田伸雄
29日(木) 19:35〜21:30 Space Terra 2000円


 2008年6月から毎月続けられている原田伸雄による「肉体の劇場」連続公演で、3年目に入った。
 今月は、岩城朋子のリーディングとの組み合わせで、それぞれに見応えがあって楽しめた。

 第一部が、岩城朋子による一人リーディング・西洋怪談「さるの手」。約50分。
 有名な作品だというのを知らなかったが、ほんとによくできた短編小説で、グイグイと聴く者を引き込んでいく。次の言葉を息を呑んで待つような緊張感がある。
 そんな小説を岩城は、奇をてらわないオーソドックスなリーディングで聴かせる。変に膨らませるよりも手堅く押さえて、何とも微妙なところを絶妙に表現していて飽きさせない。
 はじめの4人の会話がもっと鮮明になれば、さらによくなる。この作品では、この人のもつコケティッシュな雰囲気を抑えているが、コケティッシュを強調したリーディングも聴いてみたい気がする。
 話を知らなかったから大いに楽しめたというのはあるが、全体として好感のもてるリーディングだった。

 第二部が、原田伸雄による舞踏「重力と恩寵−第二章−」。約50分。
 ウェディング・ドレスで白塗り。胸に鈴のついた大きな花飾りと、髪に大きな造花。
 はじめの15分は、音もなく、ゆったりとした動きの踊り。あと、ピアノ曲に合わせての踊りに移るがこれも大きな動きはない。いかにもこの世をいとおしんでいるという風情。
 後半は、音量アップしたアリアにのせて、アジサイの花を使っての激しい踊りに。抑えていた情念がほとばしり出るさまは、アジサイの花を引きちぎり床にたたきつけることで激しく表現。
 どうしようもない煩悶のあと、ラストは、無理に抑えたような終わり方に。
 事前に考えられた振付で踊られ、即興ではないと見た。抑えた表現のなかに、目を離せない緊張があった。
 原田は言う。「舞踏とは自己をいったん無意識に投げて解体し、瞬間、瞬間に再構築する営み。逆説的だが、肉体を超えるものが表現された瞬間に、真の肉体の存在が際立つ」と。
 言われることはわかるような気がするが、目の前にある舞踏とはなかなか結びつかない。それでも、久々に原田伸雄のダンスを観て、進化しているなと感じた。

 この公演はきょう1ステージ。50人くらいの会場は満席だった。


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