福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ


《2010.9月−8》

三三と鯉昇、対照的
【国博朝日寄席 (九州国立博物館・朝日新聞社)】

構成:朝日新聞社
12日(日) 13:30〜16:05 九州国立博物館・ミュージアムホール 1000円


 柳家三三は、期待どおりの切れ味だった。瀧川鯉昇は、ちょっと引っ掛けそこなって、居眠りしてしまった。


「新聞記事」 〔瀧川鯉ちゃ〕 (口演時間:15分強)

 「天ぷら屋に入った泥棒が、主人を刺して逃げ出したが、5分たつかたたないうちにアゲられた」「捕まる筈だよ。入った家が、天ぷら屋…」という話を聞いて、それを他人にしようとして失敗する話。
 鯉ちゃは、いかにも前座という、流暢ではないがていねいなしゃべりで聴かせた。時々すべるのはやむを得ないか。まくらは、学校公演の話など。鯉ちゃは鯉昇の弟子で平成20年入門の前座。


「鰻屋」 〔瀧川鯉昇〕 (口演時間:25分強)

 鰻裂きの職人がいないので、主人が鰻をさばこうと捕まえようとするがうまいこといかず、格闘しながら町内一回りして帰ってくるが、行き先は「前回って、鰻に聞いてくれ」。
 達者なしゃべりでうまいんだけれど、なんか、ガツンとは引っかかってこない。相性かな。鯉昇は、写真では好々爺に見えるけど、慣れるまでちょっときつい。


「権助提灯」 〔柳家三三〕 (口演時間:25分弱)

 正妻に勧められて旦那はお妾さんのところに出かけることにする。提灯持ちとして権助がおともに。そして、夜半に本宅にもいられず、とうとう夜明けまでウロウロしていることに。
 ボソッと旦那にいやみ込みの人生訓を垂れる権助をうまく描いている。師匠の小三次によく似た切れのいい端正な語り口で、ついつい引きこまれる。


「やかん」 〔柳家三三〕 (口演時間:15分強)

 八五郎が隠居に「やかん」はなぜ「やかん」というか訊いた。隠居は、「川中島の合戦で、夜討ちをかけられて不意をつかれた武者が、兜をかぶろうとしたがないので、そこにあった水わかしを兜の代わりにかぶった。」という話を。
 川中島合戦の武将の名前を講談調でみごとに詠みあげるところなど、この人の芯のある語りが生きていて、聴かせる。


「船徳」 〔瀧川鯉昇〕 (口演時間:45分)

 親元を勘当され、大川端にある船宿の居候となっている若旦那の徳兵衛。船宿の親方に船頭にしてほしいと頼み込み、船頭になる。馴染みの客から声がかかり、船宿の女房の心配もどこ吹く風と、徳兵衛は客を乗せて大川を渡ろうとするが失敗してばかり。
 途中15分ほど気持ちよく眠ってしまっていた。眼が覚めると、鯉昇が徳兵衛の船頭ぶりを熱演中。身体全体を使ったダイナミックな棹使いや艪使いの演技が、びっくりするほどうまかった。


 この公演は第16回の国博朝日寄席で、きょう1ステージ。少し空席があった。お客は年配者がほとんど。


福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ