全国巡演中の、スタッフ・キャスト合せて3人という家族劇団・楽市楽座の舞台は、3人でよくぞここまでやるわ、というスケールと質で見せた。
鏡池でいっしょに暮らしている蛇ダンディと金魚姫は、子どもがほしいけど作れない。鏡池に元気な虫が来て、蛇ダンディは相撲で虫(シコ名:ホウキオニ)に負けてしまう。ふたりは虫を家族にしようとする。
屋根は全くない完全な野外舞台。
中央に直径5メートル以上もある大きな円形の水槽があって、水が回っていて、その上に直径3メートルの丸い浮き舞台が浮いてゆっくりと回っている。
そのまわりをぐるりと観客席のイスが取り囲む。照明は固定で、音響もほとんど操作しなくてもいいような工夫がされている。
3人だけの劇団のそんな仕掛けにまずびっくり。
3人で一晩物の舞台を上演するための、脚本などの工夫は大きい。
5役を3人で演じるが、ほとんどが蛇ダンディと金魚姫とホウキオニだ。蛇ダンディと金魚姫はほとんど出ずっぱりだから、外部担当は主にホウキオニのしごとになり、一部裏方も兼ねる。
歌って踊るショーのシーンと、話を進展させるドラマのシーンをうまく組み合わせて、暗転がなくても舞台進行ができる工夫がこらされている。
話はそんなに複雑ではないが、それぞれの場面をきちんと演じ上げることで、ドラマ部分をきちんと展開していく。
3人が家族になって芸術に生きていこうとするこの話は、この家族の覚悟を語ったものだ。
相撲で虫のホウキオニに負けた蛇ダンディは、自らの老いと、これまでのふたり(蛇ダンディ=長山現、金魚姫=佐野キリコ)の生活を思い起こし、エンタの旅に出発する。
すでに30年以上演劇活動を続ける主宰の長山現は、50歳を超えた今、これまでの芝居作りの大変さを振り返って十分に確認したうえで、これから一生役者を続けていくという激しい覚悟をこの話に込めた。
ほんとに、そんな長山現と佐野キリコの芸達者ぶりはどうだ。
歌い、ギター・三味線を弾き、舞い踊り、演技して、観客を引きつけてやまない。ホウキオニ役の10歳の娘・萌も、2役に裏方と大忙しで走り回って大活躍だった。
この春から親子3人で始めた全国巡演は、福岡が23ヶ所目で、きょうから18日までの放生会の期間中、筥崎宮参道近くの広場で上演される。
地元ゲストもあるようで、きょうはアダチ宣伝社の安達ひでや。チンドン屋の音とアコーディオンがうまく舞台に溶け込んでいた。
きょうの初日は立見も出て、観客は延べ100人ほどだったらしい。祭りに来たひとが観に来ていて、途中での客の出入りもけっこうあった。
おひねり用の紙や投げ銭用の封筒を配るなど、収入増のための工夫もこらされていた。