1979年に作られた、劇団「曲馬舘」を撮ったドキュメンタリー映画。
パワーにあふれたハチャメチャな舞台と、淡々とした旅の様子のコントラストがおもしろい。
舞台は、絶叫する卑猥なセリフ、乱れた着物に露出する肉体、燃え広がる火にあふれ、政治的メッセージが泥でも投げるように発せられる。猥雑で強烈だ。
映像ではわかりにくいが、現場にいれば、皮膚から伝わってくる熱気と匂いに圧倒されたことだろう。舞台は大きな構成を取っていて理知的なんだれど、表現は情に強く訴えかける。
そんな激しい舞台に対して、テントの旅は淡々というか、ロマンチックにも見えるしっとりとした表現だ。
確かに70年代はこうだったな。この映画は、そのもっとも先鋭なところを捉えることで、高度成長前期のきしむ状況を実によく反映している。
舞台や野外で火を思い切り使っているというのは、今では考えられない。高度成長を通して管理社会になっていったのがわかる。
この劇団を継承する野戦の月や水族館劇場が、いまも活動しているのは喜ばしい。