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《2010.9月−12》

生のオペラはいい
【歌劇「ラ・ボエーム」 (ウィーンの森Buhneバーデン市劇場)】

台本:ジュゼッペ・ジャコーザ、ルイージ・イッリカ 作曲:ジャコモ・プッチーニ 演出:ルチア・メシュヴィッツ 指揮:クリスティアン・ポーラック
18日(土) 16:00〜18:25 アクロス福岡シンフォニーホール 3000円


 伝統を踏まえての端正でオーソドックスな舞台で、小ぶりだが、本場のオペラの楽しさが伝わってくる。

 19世紀初頭のパリ。詩人のロドルフォとお針子ミミの哀しくも美しい愛の物語り。

 生のオペラは、やっぱりいい。
 これはほんとに、教科書どおりのオペラ。衣装や装置は時代を反映したもので、オペラが作られたときの演出を引き継ごうという姿勢があらわれている。
 オペレッタの町・バーデンの歌劇場だから、やや軽い作りなのかもしれない。やや軽いからこそ旅公演が可能ということだろう。
 そのあたりが少しばかり不満でもあるのだが、とにかく福岡で観られるのだから、文句は言えない。

 歌手は、手堅く聴かせる。
 だがちょっと迫力不足で、名曲がなかなかうまく響いてこない。さらりと流れてしまうという印象がある。
 それはひとつには、歌詞の途中に大きな転換点があるのにそこが山場にならずに、歌手もオーケストラに合せてスーッと通り過ぎてしまうためかな。
 どうやって曲の中の山場を山場として聴かせるか、歌手の度量の見せどころなのかもしれない。

 出演者は20人強で、約30人のオーケストラよりも少ない。群集シーンでボリュームが足りないと感じるのはやむをえない。
 装置は大掛かりではないが、群集の衣装などと相まって、時代の雰囲気をよく表していた。ただ、馬車代わりに馬の頭のおもちゃを持ってくるなどというのは、かなりみみっちい。
 華やかさとスペクタクルには、やや欠けていた。

 この舞台は福岡では1ステージ。少し空席があった。


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