日本在住18年という中国人オペラ歌手・サイ・イエングアン(崔岩光)のソプラノ・リサイタル。オペラの歌唱を身近に聴きたくて行った。
全体として心地よいリサイタルだったが、特にオペラのアリアの歌唱が迫力があって、楽しめた。
第1部は「世界の名曲」で、日本の歌謡などを8曲。約35分。
「さくら貝の歌」、「宵待草」、「落葉松」、「夜明けの歌」という日本の歌謡は、どこか遠慮しているような弱さがある。
「アンチェインドメロディ」、「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」、「Love is A Many-Splendid Thing」のような外国の曲の方が、この人らしい押し出しが効いていて圧倒的によかった。
最後がこの人のテーマソングともいうべき「愛する小鳥よ」。小鳥の声を取り込んだ、繊細だが芯が強い聴かせどころいっぱいの歌を、安定した歌唱で堪能させてくれた。
第2部は「オペラアリア」で、4曲。約25分。
椿姫「ああ、そは彼の人か 〜花から花へ〜」、トゥーランドット「この御殿の中で」、蝶々夫人「ある晴れた日に」「かわいい坊や」。
押さえるところと激しく表出するところの切換えが絶妙で、それぞれの曲の中にあるドラマをキッチリと描きあげていて感動的だ。
サイ・イエングアンは、「歌うとき(目の前に)動いていく絵が見える」と言う。普通の喋りの声と歌う声では全然違っていて、役に入りこんで歌うときに発揮する力の大きさがわかる。
アンコールは、アリア1曲(曲名はわからなかった)と、「イーライシャン(夜来香)」と「赤とんぼ」の3曲で、話と合せて約25分。
「イーライシャン(夜来香)」とか「愛する小鳥よ」という中国語の歌は、さすがに母国語。説得力というか、迫力が違う。
この公演はきょう1ステージ。かなり空席があった。
福岡音協主催の公演を観るのは久しぶり。かって労音に対抗して作られた観客組織だが、すでに労音はない。観客は、会員らしい高齢者が目立った。