仕舞など観ていると、プロかアマチュアかの見分けはつくが、プロのお能の善し悪しはわからない。いいものを観込むしかない。
「九州山本会」は、大阪にある観世流・山本能楽会の九州の会。年2回ほど演能会があっている。
最初に山本能楽会理事長で「項羽」のシテをつとめる山本章弘による解説が25分。曲の解説は短く、内輪話がかって雑談に近い。
○仕舞「経正」「巻絹」 8分
○能「三輪」 90分
三輪神社の神婚説話を基とした曲。三輪の山里に山居している玄賓僧都の前に三輪の明神が現れ、天照大神の岩戸隠れの有様を見せ夜明けと共に消え失せる。
シテは今村一夫。前シテの地味な装束から、後シテでは豪華な衣装。その作物の中での物着はけっこう大変そう。後半の舞は、多彩で見せるが、気持ちよくなってついウトウト。
○狂言「伯母ヶ酒」 23分
酒屋を営む伯母のもとを訪ねた甥。けちな伯母が酒をふるまってくれたことがないので、甥は鬼が出るという噂の話をして、浮立面をかぶって鬼に成りすまして酒を飲もうとする。
シテの野村万緑は手堅い。アドの宮永優子は、声がよく出ているが、表現力はいまひとつ。
○仕舞「難波」「班女」「善知鳥」 4分
○能「項羽」 65分
項羽は劉邦とともに秦を滅ぼして楚王となるが、のちに劉邦と不和になり、「垓下の戦い」で敗北。項羽とともにあった寵姫虞氏は自害。項羽は深く悲しみ、自らもまた覚悟を決める。
前シテが船頭の老人、後シテが項羽。演じる山本章弘は、非常に聴きやすい謡で詞章がばっちりわかるが、地謡になるととたんにわからなくなる。きびしい武者面で悲壮感が漂う。
アイの吉良博靖が、きっちりとしたしゃべりでいい。
この舞台は、きょう一日だけ。たくさん空席があった。