前半(第1幕)と後半(第2幕)でおもしろさに落差がありすぎる。前半(第1幕)のおもしろさで全編通してほしかった。
爆発を起こしたクロアリの国から逃げてきた不良少女クロが、落ちぶれた海賊ゴキブリのゴキ、最近売り出し中の海賊カマキリのカマコと出会い宝の島を探す旅に出る。
目当ての宝の島は見つけたものの・・・。
家族3人で劇場ごと移動しながら全国で野外劇を上演し続けている野外劇団 楽市楽座。この形での活動も今年で3年目で、筥崎宮放生会での公演は3回目。「宝の島」は今年の新作の音楽劇だ。
普通は一挙に上演する「宝の島」を2幕に分けて上演する。お祭りの客を取り込むための工夫で、呼び込みも「上演時間30分ですよ」とその短さを強調する。
観客は開演時には満員だったが、第1幕ではラストまで観客が減らないのに、第2幕では最後には観客が3分の1ほどに減ってしまった。お祭りの客はシビアだ。おもしろさにもつまらなさにも非常に敏感に反応する。
3匹の出会いと海賊として仲間になるまでを描く第1幕は、ほんとに楽しい。
水の上に浮かんで回る小さな舞台を使いこなしながら、野外劇らしいやや大げさな演技も楽しくて、3匹の個性もクッキリ。派手な衣装で片手に草刈鎌を持って見得を切る佐野キリコのカマコがなかなかの迫力だ。
歌もたくさんあってそれぞれに聞かせる。大阪弁でのやりとりが漫才を聴いているような楽しさだ。テンポがよくて引き込まれる。
3匹が目指す宝の島に到着して戦う第2幕は、晦渋さが目立った。
歌と漫才調の会話が減って、生すぎる意見陳述が繰り返される。第1幕では福島原発事故のことが不良少女クロの体験として語られていた。第2幕では海賊の黒旗の説明から始まって作者の脱国家論が言葉だけで延々と語られ、ぼやき気味のアジテーション芝居になってしまった。生なメッセージが楽しさを殺してしまった。言いたいことはわかるし賛同もするが、それを表現するのではなくて直接言ってしまう姿勢に白けた。
第2幕では3匹が問題をどう乗り越えて幸せになるかがポイントだ。3匹がたどり着いた島が権力者によってカジノの島にされていたことがわかるのは終盤になってから。乗り越えていくべきものが大きすぎるのに、最後3匹は、ポンポンポンと権力者をやっつけてしまう。何ともいびつだ。
そんなふうに、第2幕では観客目線がすっぽりと抜け落ちているのが残念だった。
この舞台は福岡では、きょうから18日まで7ステージ。毎日、「ツバメ恋歌」とこの舞台の2本が上演されている。