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《2012.9月−7》

東西の古楽についての話がおもしろい
【古楽をめぐる対話 (日本アートマネジメント学会 九州部会)】


13日(木)19:00〜21:10 アクロス福岡 国際会議場 1,000円


 日本アートマネジメント学会 九州部会が5ヵ年計画で進める「アートをめぐる対話シリーズ」の第1回「古楽をめぐる対話」を聴いた。
 対話では西欧の古楽と日本の古楽の相違点と共通点がうまく説明されていた。古楽による実演も楽しかった。

 まず、近藤誠一・文化庁長官による基調講演「対話から始まる文化発信」が約50分。
 日本の文化行政を諸外国と比べるなどの大きなところから入って、文化・藝術の価値・日本の伝統文化の意義を再確認し、今後何をなすべきかが、行政の立場から語られる。スライドを使っての講演は、わかりやすかった。

 次が「古楽をめぐる対話」で、近藤誠一氏、有田正広氏、白坂保行師による鼎談。司会は朝岡聡氏。約55分。
 有田正広氏(フラウト・トラヴェルソ、福岡古楽音楽祭 音楽監督)は、実際の楽器を見せながらフルートの変遷を語った。社会の変化に伴う演奏環境の変化が楽器をどう変えてきたかわかった。
 白坂保行師(高安流大鼓方)は、能が武士の式楽となったために能の楽器(小鼓、大鼓、太鼓、笛)には変化はないが、能そのものは変化してきているとして、現在は1時間40分で演じられる能の曲を、秀吉時代の上演時間40分で試演した話がおもしろかった。
 日本の音楽に比べて西洋音楽は演奏のための情報が多く楽譜に書かれているとはいえ、有田正広氏は西洋音楽でも同じ曲でも演奏する人でまったく違うと語った。そのあたりの身体性と時代性については、西欧の音楽も日本の音楽もおんなじかなと思った。
 司会の朝岡聡氏の話の受け答えがとても的確で、うまく話を引き出して繋いで深めていた。プログラムに書かれた朝岡聡氏の肩書きが、「フリーアナウンサー&コンサートソムリエ」とあった。なるほど。

 そのあと、楽器を使った実演が15分弱。

○能楽:「中之舞」(笛:森田徳和、小鼓:幸正佳、大鼓:白坂保行)
 5分ほどの曲の中にみごとな緩急がある。単独で聴くと能囃子の美しさがよくわかる。

○古楽:J.M.Leclair(ルクレール)「Sonate en trio」から Adagio,Allegro(有田正広:フラウト・トラヴェルソ、ヴィオラ・ダ・ガンバ:福沢宏、チェンバロ:脇田美佳)
 フルートとヴィオラのくぐもった音にチェンバロのとんがった音が重なって、現代との趣の違いがわかった。

 このイベントはきょう1ステージ。2階席などに若干空席があった。


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