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《2012.10月−9》

パントマイムを超えたパフォーマンス
【が〜まるちょば サイレントコメディー JAPAN TOUR 2012 (が〜まるちょば)】

作・演出:が〜まるちょば(ケッチ!/HIRO-PON)
21日(日)18:35〜20:50 キャナルシティ劇場 3,500円


 とにかくおもしろい。ケッチ!(赤いモヒカン)とHIRO−PON(黄色いモヒカン)のキャラの組み合わせは抜群。ものすごく切れのいいパフォーマンスが息もつかせないほどのスピードで展開される。パントマイムを超えたが〜まるちょばのパフォーマンスの世界にとっぷりと浸るのは、ほんとに心地いい。

 この「JAPAN TOUR 2012」のステージは、途中15分の休憩をはさんで、前半はショーとショートスケッチが1時間、後半は西部劇が1時間という構成。

○GAMARJOBAT SHOW
 2人ともモヒカン頭にスーツ。オープニングは暖機運転の気分で観客の緊張をほぐす。定番のカバンは少しだけで、とにかく延々と拍手の練習をさせ、客いじりも半端ない。特に、目立つ席に遅れてきた人をいじって会場全体を爆笑の渦に巻き込む。HIRO−PONのギターとケッチ!の歌のコントもおもしろい。全体を通して発するのは擬音だけ(固有名詞は例外)で、そのタイミングと大きな動きでみごとに観客を引っぱっていく。

○初めての手術 (HIRO−PONソロ)
 初めての手術で開腹手術をする外科医のマイム。ハチャメチャな手術でひどいことになって、止まってしまった患者の心臓を自分の心臓と入れ替える―というようなところまでを細かくていねいになぞって、いかにもという外科医の格好との落差で笑わせる。

○地底人ゴロー (ケッチ!ソロ)
 縄文人のような格好の地底人ゴローは地上で人を狩るのだが、なんせ光に弱くて光から逃げ回っている様が、ややさびしくて哀愁を感じさせる。

○THE WESTERN
 6歳の時に無法者に母を殺されて天涯孤独になってしまった西部の男が、お尋ね者になった無法者を追いかけて仇を討つという話。マカロニウエスタンのパロディ風の作りだが、西部劇らしいエピソードを盛り込んだちゃんとしたストーリーがある。サイレントコメディーだが完全にサイレントというわけではなくて、擬音や効果音が入るしマカロニウエスタン風の音楽で盛り上げる。
 HIRO−PONが主役の男だけを演じ、ケッチ!が、母、仇の無法者、恋人などの役を演じ、舞台進行の黒子の役までやる。そんなケッチ!の早替わりは見ものだ。男と恋人との濡れ場まであるなど、ありきたりになりがちなストーリーを多彩にするアイディアを詰め込んでいる。
 キーとなる音楽がビートルズの「Hey Jude」。世界に認められるきっかけとなった英エディンバラの演劇祭と、優秀なマネジャーの必要性を教えてくれたビートルズをリスペクトしている。

 高い身体能力に支えられた豊かな表現力を旧来のマイムの世界から解き放って、観客にガンガン働きかけて巻き込んでいくようにしてエンターテインメント性が高められている。前回観たのは800席のももちパレスでだったが、今回は1,100席を超えるキャナルシティ劇場。その会場の大きさに負けてはいないパフォーマンスだった。
 この舞台は福岡では1ステージ。ほぼ満席だった。


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