福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ  前ページへ 次ページへ


《2012.10月−11》

玄海竜二をたっぷりと観られた、が
【九州選抜座長大会“玄海竜二一座”公演 (玄海竜二一座)】

構成:玄海竜二
27日(土)14:00〜16:20 城島総合文化センターインガットホール(久留米) 2,500円


 玄海竜二の舞台をたっぷりと観られたのはよかった。
 座長大会とかゲスト出演とかで何回も観てはいる玄海竜二の舞台だが、一座のちゃんとした公演を観たことがなかった。この公演は「九州選抜座長大会」と銘打ってはいるが、実質は「玄海竜二一座」と「劇団花月」の合同公演で、たくさん登場する玄海竜二の多彩な芸を楽しんだ。

 開幕してまずは、第一部の舞踊ショー「花の舞踊絵巻」。
 オープニングは、初めて観る玄海竜二の女形。どこか男っぽくて色気は若干欠けるが、表現も多彩だ。体全体を時に敏捷に動かして大きく緩急をつけ、扇子を華麗に動かしてグラデーションをつける。
 そのあと、「玄海竜二一座」の三代目片岡長次郎、加勢川大輔、沢村菊乃助、「劇団花月」の一條洋子、一條ゆかりの舞踊が8曲ほど続く。三代目片岡長次郎はごつくて強面、加勢川大輔は太っててユーモラス、沢村菊乃助(玄海竜二の息子)は優男で、それぞれの舞踊を見せる。一條洋子、一條ゆかりは女剣劇の役者らしく男役も決まる。玄海竜二はまったく違った感じの舞踊を踊ってその幅の広さを見せる。

 そのあと玄海竜二の歌が1曲あってあいさつとトーク。トークはどこか自慢話っぽくなるのはしかたがないか。トークの後、さらに歌が2曲。歌は、演歌っぽいのの間に「ラヴ・イズ・オーヴァー」を入れ、役者らしくうまく歌い上げる。
 そのあとに寄付金集めのためのお茶の販売で、売上の20%(20,000円)をその場で社会福祉団体に寄付。そのあと舞踊が4曲あって第一部終了。ここまで開幕から1時間20分弱。

 第二部はお芝居「燈台を守る矜持」(アナウンスが聞き取りにくくて題名が間違っているかもしれない)3場。
 13年前、港の燈台を守る一家の長女が十手持ちに関係を迫られ、長女は十手持ちの子分を斬って逃げて、残った一家は辛酸をなめた。それでも今は次女が燈台守を任されるようになったが、一家の父は酒に溺れている。その父を十手持ちが一晩燈台の灯りを消すように金で釣って父はそれに乗ってしまう。そこに、今は女渡世人になっている長女が帰ってくる。
 見せ場は、酒が入っている時とそうでない時との父の落差で、普段は小心者なのに酒が入ったらとたんに支離滅裂で乱暴でどうしようもなくなってしまう。父役の玄海竜二はその落差をうまく表現してはいたが、なんせこの芝居、筋書きがメチャクチャだからその演技が生きない。

 父は酔ってもいないのに、飲む金ほしさに十手持ちの依頼をあっさりと承諾する―というリカバリーしようのないところから出発する。
 十手持ちは抜け荷でもするのかと思えば、燈台の灯りを消し、漁から帰る漁師の船が壊れて、その修理のあいだ賭場に来させるため―というのもこじつけ気味。その十手持ちは、父との約束を破って手下に次女を襲わせ手傷を負わせる。手傷を負いながら、燈台に行った父を追いかける次女は十手持ちに斬られて致命傷に。そこに登場した長女が十手持ち一家を皆殺しにする。父と長女は次女を看取って、幕。
 この話のツッコミどころだらけの支離滅裂さで、父にまったく感情移入できないから、そこは玄海竜二の演技力でも如何ともしがたい。次女の一條ゆかりはけなげな感じが出ていてよかった。長女の一條洋子は殺陣がさすがだ。お芝居の上演時間は約45分。

 アナウンスが、芝居小屋の雰囲気を出すためかわざと音質を落としていて、聞き取りにくかった。普通の芝居小屋のように、外題と出演者の掲示はしてほしい。「劇団花月」との合同公演ならば、一條そらが見たかった。
 この公演は、昭和初期に建てられた、本格的な桟敷席を備えた城島劇場を思い起こして、城島総合文化センターインガットホールで再現しようという公演だという。会場は桟敷席こそないがレトロな内装になっていたのは、城島劇場を意識したのだろう。
 この舞台はきょう1ステージ。少し空席があった。


福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ  前ページへ 次ページへ