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《2014.11月−2》

思い切り笑った
【犬の散歩(短編集) (犬と串)】

作・演出:モラル
4日(火)19:35〜20:55 甘棠館Show劇場 1,000円


 まったく毛色の違う個性的な短編3本の上演で、やたら力が入ってまったく深みのないくだらなさに、思い切り笑った。

○新宿〜SHINJUKU〜
 殺人事件を扱った刑事モノ。歌舞伎町のホステスが殺された。刑事2人はつきあっていたラーメン屋の店員をしょっ引くが、同僚のホステスは真犯人探しを始める。
 激しく大げさに動き続けてムダにハイテンションのハードボイルド刑事2人とラーメン屋の熱血店員2人。店員はラーメンのことしか頭になくて刑事とまったくかみ合わない。真相を知るというガソリンスタンドの男も間断なくスタンド店員としての大げさなアクションを無意味に繰り返すだけ。結局、真犯人はわからずじまい。
 俳優たちは力がある。それらしい衣装など、舞台の作りはていねいだ。かなりの量の生麺が舞台上にボロボロとこぼれて掃除がたいへん。そんなところまでを笑いにしてしまっていた。上演時間約20分。

○OCEAN〜失われし七つの秘宝〜
 秘宝探しの冒険ファンタジー活劇を、高校の文化祭か何かでまったくダメな上演をしたというパロディ劇。
 演技にも小道具にも映像にも舞台の段取りにも、演劇上演にからむトラブルの見本市の態。長老は台本を見ながらしゃべってそれでもセリフ間違うし、ヒーローの許婚者はウェディングドレス姿で頭を大きく傾けたままでセリフは棒読み。秘剣はフニャフニャで俳優が小道具係とケンカ。映像も操作ミス多発でシンクロしない。そのほかにもトラブルいろいろ。
 途中、ヒーローが自分の肘から先の右手を持って出てくる。その手をガムテープで腕に繋げてそこに剣を持たせて(これもガムテープで貼って繋いで)闘わせる。ヒーローの右手が切断されたのが、パロディ劇の中で元々仕組まれていたのかパロディ劇の中ではリアルだったのか、よくわからなくなったところがおもしろかった。
 ムリヤリに話は進んでラスト肩透かし。パロディ劇という仕掛けで見せた。上演時間20分弱。

○王女クリトリーナ
 いかにも下ネタという題名だが、登場人物も、セクロス、オナ王、パイパニア、ティンポーニオ、アヌヌウス。意に染まぬ結婚を迫られた王女クリトリーナが、愛する男を捜して旅に出る。
 この舞台の仕掛けは“無声映画”。セリフは日本語と英語の字幕で映され、字幕の間は暗転して俳優たちは動きをストップする。全編にわたってシャンソンが流される。俳優たちの動きはおおむね優雅なのに下ネタ連発というギャップ。場面も“中央都市ポコチン”とか“スカトロの森”とか。たくさんのバイブレーターにオナホールも登場し、舞台中央に立てたバイブレーターがクニャクニャと動く。
 ラスト近く、ハリセンが出てきて叩き始めると舞台はドタバタになり、男たちはズボンを脱いで下半身スッポンポンになる。演出のモラルが出てきて俳優たちを怒り、制作の横井佑輔も出てくるが、2人とも下半身スッポンポンに。着るものが配られて“着替え中”の幕の後ろでモゾモゾ。幕が取り払われると男性俳優4人と制作が素っ裸で客席にダンス調であいさつ。そのままカーテンコールになり、腰ほどの高さの幕の後ろに男性出演者と演出と制作とゲストMCまでもが素っ裸であいさつ。バイブレーターをオナホールに突っ込むという悪ふざけも。でも全体的に笑い飛ばしていて、さほどいやらしい感じはなくサバサバしている。上演時間約25分。

 劇団犬と串は、2008年に早稲田大学演劇研究会を母体に旗揚げされた劇団で、主宰で作・演出のモラルは福岡の出身。中心俳優の満間昂平・鈴木アメリは演劇祭などで俳優賞を受賞しているし、俳優のレベルは高い。福岡出身の糸山和則(劇団アマヤドリ所属)が客演している。衣装替えの時間確保のためのMCをモラルとゲストMC(きょうは万能グローブガラパゴスダイナモスの椎木樹人)で繋ぐ。
 この舞台は福岡ではきょうとあすで2ステージ。満席だった。


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