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《2014.11月−5》

アートサーカスの超絶演技が楽しめた
【TRACES〜軌跡〜 (7 Fingers)】

演出・振付:シャナ・キャロル ジプシー・スナイダー
7日(金)19:05〜20:40 キャナルシティ劇場 プレゼントチケット


 シルク・ドゥ・ソレイユから飛び出した 7 Fingers のアートサーカスは、7人のサーカスパフォーマーによる超絶の個人技が楽しめたが、全体的な構成がやや平板で、もう少し演出の工夫があってもよかった。

 舞台には中央に高く2本のポールが立っていて、上手にピアノがある。天井と舞台の左右には幕の代わりに引きちぎられたような布が張ってある。シェルターをイメージした舞台で、そこに閉じ込められた若者のパフォーマンスという形で進行していく。
 開演前のアナウンスで、“携帯の電源は切らなくていい”“写真撮影はOK、ただしフラッシュは使わない”“ビデオ録画もOK”“飲食も自由”という前説がある。禁止事項だけという毎度みみだこの前説と反対のことばかりだが、開演中に携帯電話は鳴らなかったし、写真撮影している人はわずかにいたけど、飲食している人はいなかった。
 7人の出演者のうち女性は中国人のナオミ・ツィマーマン1人だけ。メンバーはそれぞれに持ち技があるが、ダンスや歌や演技などみんなでやるシーンも多く、持ち技以外のパフォーマーとしての能力も要求される。

 オープニングはストロボ光のなかでの全員のダンス。それが終ると天井から降りてきたマイクで出演者ひとりひとりが自己紹介。それぞれ出身地と年齢を言う。欧米と中国からで年齢は20代前半が多い。
 前半はサーカスっぽくはなくて、ピアノに合わせて歌ったりバレエを踊ったり、みんなで器楽演奏したり、スケボーを使ったアクロバティックなダンスをしたり、ジャグリングしたり、大型フラフープやバスケットボールで遊んだり、積んだイスの上でのバランス芸など、小振りなパフォーマンスが多い。
 後半は、ポールに登ってもう一本のポールに跳び移る、大きな輪を廻す人間車輪、天井からのロープにつかまっての空中飛行、シーソーで大きく跳ね上げる、高いところにある輪くぐり など、派手なパフォーマンスが多い。

 シルク・ドゥ・ソレイユと同じように旧来のチマチマしたサーカス芸は少なくて、運動能力を強調したようなものをショー的に繋げて見せていこうとしている。会場の関係だろう空中ブランコや大掛かりな綱渡りはなく、大きな芸で見ばえをよくするためだろう足芸などの曲芸も少ない。オートバイショーや動物芸はむろんない。
 7人の出演者は出ずっぱりで、得意芸だけ見せてサッと引っ込むわけにはいかない。シルク・ドゥ・ソレイユのような大掛かりな舞台装置やきらびやかな衣装があるわけではない。そういう、ホールでのサーカスショーという条件のなかではよく工夫されている。
 惜しむらくは、個々の演目についてはそれぞれに楽しめるのに、演目の繋ぎ目でテンションがさがってしまうこと。だから大きな流れとして盛り上がっていかない。映像などにもう一工夫ほしいところだ。

 この舞台は25カ国200都市で1600回にわたり上演され、900,000人を動員したという。福岡ではきょうからあさってまで3ステージ。少し空席があった。


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