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《2014.11月−7》

独特の雰囲気、百栄落語
【春風亭百栄独演会 (ブラックカンパニー)】

構成:春風亭百栄
10日(月)19:00〜21:05 ぽんプラザホール 3,200円


 押し出しの弱いすっとぼけたようなボソボソとしたしゃべりに、自虐的な自分ツッコミを入れたりして肩肘はらずにゆったりと聴かせながら、いつの間にかシュールな世界に連れて行く。そんな春風亭百栄の何ともいえない話術が楽しめた。

 現在52歳の百栄師匠は、落語家になったのが32歳と遅いので真打になってからまだ6年だが、独特の雰囲気の落語が人気でいちど生で聴いてみたい落語家だった。そんな語り口もオカッパ頭(今は少し伸び気味で前で分かれていた)も個性を際立たせるための戦略かと思っていたが、実際にその噺を聴いてみると、それらはごく自然に師匠の性格から来ているものであることがわかった。
 古典も新作もという落語家で、古典vs新作をネタにした「天使と悪魔」という新作もある。新作は自作のもの以外にほかの落語家の作品も演る。きょうの4つの演目はすべて新作だが、「トンビの夫婦」はほかの落語家の作だ。寄席出演が多いので15分にまとまる噺が多いということだった。

「コンビニ強盗」
 まくらは自己紹介のあと師匠定番のボケの話。「コンビニ強盗」は、コンビニに押し入った強盗が店員にいいようにされて弁当などを買わされてしまうという話。
 ともに若い強盗と店員のやりとりがバカバカしい。店員は強盗を待たせて淡々と客のレジ打ちするし、強盗に要求金額を訊くし。強盗は困惑して「あなたの気持ちでいいです」だと。そんな噺をいかにもそれらしく違和感なく聴かせるのはさすがだ。口演時間20分強。

「ロシアンブルー」
 落語会へ急ぐ男に、具合の悪い男・ケガをした子ネコ・助けてくれた人と人違いをする女、とジャマが入る。が、それらは繋がっていって男はそこを遡って行って大きな幸運を手にするはずが・・・。
 ネコ好きの百栄師匠らしく「オッドアイのロシアンブルー」という奇種のネコが噺のカナメになっている。広げた話を刈り取っていくという構成がおもしろくて、ちゃんと収束するかと思いきや、ラストはどんでん返しで発散して終る。口演時間30分弱。

「トンビの夫婦」
 酔った夫に殴られたあと夫が優しくなっていろんなものを買ってくれる、DVは“人生のスパイス”だ―と隣人から威張られた女性が、その気になってやさしい夫にDVを挑発するという話。
 挑発に乗らない夫にDVしてしまって、結局女性が夫に新しいキセルを買ってやることになるといういかにも古典落語らしいオチだが、実はこれは新作落語で、オー・ヘンリーの短編「ハーレムの悲劇」を三枡屋う勝が落語にアレンジしたもの。オチは落語らしく変えられている。百栄師匠はていねいに演じていて、古典落語かと思ってしまった。口演時間約30分。

「露出さん」
 何十年も毎夕同じ時間に露出している露出狂のおじさんには、日常化してしまって地域の誰も驚かないどころか、性犯罪を抑止したと警察に表彰までされている。そのおじさん本人は誰も驚かないことが不満で、何とかしようと悩む。
 どぎついことが常態化してバカバカしい状況になっているおじさんを語って、ちょっとした言葉の積み重ねでほのぼのとした雰囲気を作っていく。露出するしぐさが楽しい。口演時間15分強。

 この公演はきょう1ステージ。かなり空席があった。


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