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《2014.11月−8》

豪華な共演者の芸を堪能
【平成二十六年 一の会 (一の会)】

構成:飯田清一
12日(水)11:40〜17:50 大濠公園能楽堂 無料


 幸流小鼓方の飯田清一主宰の「一の会」の平成26年の会(素人会)は、小鼓を打つ発表者のまわりを固めるプロの共演者が豪華で、その芸をたっぷりと堪能した。

 発表者は18名なので舞囃子・居囃子が18番で、比較的ポピュラーな曲が多く、それぞれの長さは15分から30分ほど。それに、飯田清一が打つ番外舞囃子が冒頭にあり、区切り的に番外一調が3番あるので、全部で22番。途中1回休憩が入る。11時の開演に40分ほど遅れたので、番外舞囃子と舞囃子2番が観られなかった。

 共演者が実に豪華だ。シテ方が、梅若玄祥、片山九郎右衛門、観世喜正、山本章弘、梅若紀彰、坂口貴信、林宗一郎 ほか。囃子方が、亀井忠雄、観世元伯、一噌隆之、亀井広忠、幸正佳、横山幸彦 ほか。これらの能楽師の演能を見るのが目的で行ったが、同じように考える人が多いのか観客は多くて客席の7割ほどが埋まっていた。
 小鼓の発表会なので、小鼓以外の囃子方とシテ方はプロの能楽師が務める。例えば、長野トミ子さんが小鼓を務める「砧」は、シテ:梅若玄祥、地謡:山本章弘・梅若紀彰・大槻裕一・山崎正道、大鼓:亀井忠雄、太鼓:観世元伯、笛:一噌隆之 という具合だ。そういう豪勢な顔ぶれの能楽師の謡や舞を、多様な組み合わせで観ることができるのはほんとにぜいたくだ。

 シテ・地謡では、やはり梅若玄祥が圧倒的な存在感で、上記の「砧」などもったいなくて舞台から目が離せないほどだ。片山九郎右衛門と梅若紀彰はダイナミックに迫って踏み込み、観世喜正はどこかゆったりした演じ方だ。坂口貴信は実にスマートに形よくすっきりと決める。
 舞囃子・居囃子は仕舞よりは長い時間演じられ、シテの演者がどんどん替わっていくので、それぞれの演者の個性がよく見える。それが地謡になるとみごとにまとまって朗々と響く謡になる。

 囃子方では、大鼓の亀井忠雄・亀井広忠の父子はかなり対照的な打ち方に見える。広忠が掛け声も大きく力を込めて打ち込むのに対して、忠雄はどこか余裕を持った打ち方だがしっとりと絡みつくような感じがある。忠雄の動きを見ていても手組みがわからないのは、どっか行書的な打ち方だからなのだろうか。きょうは、九州では聴く機会の少ない観世元伯の太鼓と一噌隆之の笛が聴けてよかった。
 一調とは、謡い手1人と 打楽器 (きょうは小鼓) の奏者1人が能の一部分を演奏すること(舞はない)。きょうは番外一調が、「笠之段」(梅若紀彰+成田達志)、「鐘之段」(梅若玄祥+幸正佳)、「玉之段」(観世喜正+横山幸彦)の3番で、通常とは違う一調の小鼓の打ち方が新鮮だった。

 きょうの発表者はほとんどが女性で、それも年配の方が多い。きょうの能楽師の方たちは全員男性だったが、能を習っているのは圧倒的に女性が多い。囃子方にはいないけれどもシテ方には女性能楽師が増えてきた。能を習う男性がもっと増えてくれるといい。


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