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《2014.11月−17》

行ったのがまちがいだった
【博多ヒストリカ (演劇創作館椿楼)】

作・演出:高橋克昌
30日(日)17:35〜20:30 ぽんプラザホール 1,800円


 俳優のためにダラダラとどうでもいいよけいなシーンを詰め込んで引き延ばす。舞台のリアリティなどどうでもよくて内容はいい加減さのオンパレード。俳優は目立ちたいだけの演技で臭い。こういう公演はほんとに始末に悪い。行ったのがまちがいだった。

 福岡県庁の文化財保護課・史料整理係に、古文書と刀が持ち込まれる。所長の立花寺慶一は調査を進めて、古文書が日本最古の漢字の文書であることを突き止め、刀は盗まれた宮本武蔵愛用の名刀であることを突き止める。古文書も刀も骨董窃盗団に狙われていて、窃盗団のスパイが文化財保護課にいるらしい。

 「演劇創作館椿楼」の舞台は久しく観ていないが、主宰の高橋克昌はその戯曲が九州戯曲賞の最終候補に残るなどレベルが上がっていそうなので、パンフ記載のあらすじが子どもっぽかったのが気にはなったが、観に行った。
 俳優のためのエンタメだ。俳優が目立つためには支離滅裂な展開や荒唐無稽なウソも平気でやっちゃう、という舞台だ。観客のためにはそんな展開やウソも許される、と思い違いしている舞台ではない。後者も問題だが、前者は救い難い。
 そしてその結果どうなったか。舞台はトロくてものすごく平板でたいくつ極まりない。何も起こらないまま第一幕終わりまで1時間15分も延々とイントロを引っぱる。第一幕が終ったら帰ろうと思っていたら、第一幕の終わりに銃声がしたので、あと1時間だと思って第二幕を観はじめたら、1時間半にも引き延ばす。こんな内容のない舞台でほぼ3時間の上演時間はありえない。

 とにかく観客無視もはなはだしい。ウダウダとどうでもいいことをしゃべりまくり繰り返して、ゴチャゴチャとやりすぎてテンポは最悪。脳内ブレーキ踏みすぎて頭が熱を持つ。かと思えば伏線もなく勝手に話が進む。キャラは劇画かアニメのマネだろうが、カッコいいとはとてもいえない変なヤツだ。
 そして結末はというと、刀は政治的な圧力があって封印され、古文書は骨董窃盗団のスパイだった文化財保護課の女性職員に持って逃げられる。終り方が中途半端過ぎだろ。ウェルメイド・プレイって言葉、知らないのか。

 以下に違和感の主だったものを列挙しておく。

【福岡県庁関連】
 ○組織がないのに所長などという役職名だけ残すことはない。
 ○28歳で所長というのはないし、県の役職の世襲もない。
 ○特定の人の配属を個人が決定するような情実人事はない。
 ○糸島の文書調査に所長が1週間の泊出張することはありえない。
 ○係長の熊本出張を上司が知らないということはありえない。
 ○職員が拳銃を持つことはありえない。
 ○骨董窃盗団の手先が県庁の同じ課にふたりもいるはずない。
 ○職員が5人もまとまって作業だけすることは考えにくい。
 ○皆が退出した夜間に室内にいるとセキュリティシステムに引っかかる。

【文化財関連】
 ○言っているような仕事は文化財保護課ではなくて九州歴史資料館の仕事だろう。
 ○糸島で発見された古文書ならまず糸島市役所がからむ。
 ○文化財保護課に簡単に持ち出せる3億円分の文化財はない。
 ○3億円分持ち出した事実が発覚しないほど管理は甘くない。
 ○資料的価値と骨董的価値を混同している。
 ○認知されてこその文化財の価値で、認知されなければ価値はない。
 ○県議程度からの圧力で重要な文化財が封印されることはない。

 この舞台はきのうときょうで3ステージ。ほぼ満席だった。


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