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《2014.12月−3》

子ども参加でライブ感たっぷり
【サンタクロース会議 (青年団)】

作・演出:平田オリザ
9日(火)16:40〜17:35 19:05〜20:05 みやき町コミュニティーセンター こすもす館 多目的ホール(佐賀) 2,000円


 子ども参加型演劇「サンタクロース会議」と「サンタクロース会議 アダルト編」の2本立てで、それぞれを単独で観てもおもしろいだろうけれど、2本まとめて観られてさらにおもしろかった。

 会場のこすもす館 多目的ホールには、舞台の真ん中にベッドがあって子どもの格好をした俳優が寝ている。ベッドの後方にベッドを円形に囲む机があって、丸イスが9個と大げさな背もたれ付きの議長用のイスが真ん中にある。舞台の上手と下手にはクリスマスツリーがあり、舞台後方には暖炉と大きなエントツがある。全体にクリスマスらしい飾り付けがされている。
 ベッドの手前にグリーンの厚手の敷物が敷いてあって、そこが子どもたちの席。アダルト編の時は敷物が小さくなって空いたところに大人用の席が作られる。大人の席は子どもたちの席のさらに手前の平土間の上に4段に作られていて、そこに100個近くのイスが並べられている。入り口から細い通路を通って舞台と客席に上がる。


【子ども参加型演劇「サンタクロース会議」】 ―サンタクロースはいるの?―

 開演20分前に開場すると子どもたちには「かいぎのきまり」と「ぬり絵」が渡される。開演前のあいだ、子どもたちはぬり絵をしている。開演前に「かいぎのきまり」の確認がされる。
 暗転して大きな音でジングルベルが鳴って明るくなるとベッドの子どもが起き上がって、大きな靴下からプレゼントを取って暖炉の中に入っていく。
 “第833回サンタクロース会議”が7人が登場して始まる。会議メンバーは9人なのだが、遅れてたり欠席している人がいるのだ。メンバーは、議長ほか2人が関係者で父兄が4人と専門家2人。専門家は、クリスマスの専門家・ガミガミ博士とサンタクロースの専門家・ガリガリ博士。子ども役の3人の俳優が子どもたちに混じっている。第833回の議題は“サンタクロースに何をお願いするか”。子どもたちが手を上げてほしいものを言うと議長がメモして皆で議論する。ガミガミ博士とガリガリ博士が引っ掻き回す。そして、いい子でないとプレゼントもらえない、いい子悪い子は見えない小人が決める、という結論で第833回の会議が終る。ここまで20分弱。
 “第834回サンタクロース会議”の議題は“どうしたらサンタクロースに会えるか”で同じような形で約15分。“第835回サンタクロース会議”の議題は“エントツのない家はどうするか”で20分弱。子どもたちの意見はメモされて名まえといっしょに議長により繰り返されるので子どもたちも満足そうだ。子どもたちの意見は多様だが、会議メンバーは最初からシナリオがあるように澱みなく会議を進めて手際よくまとめていく。どういう意見が子どもたちから出るかわからないので、観ていてハラハラでライブ感たっぷり。大人の観客はそこを楽しむという趣向だ。午後4時40分から5時35分まで、上演時間約55分。


【サンタクロース会議 アダルト編】 ―サンタクロースはいない―

 基本的なところは“子ども参加型”と同じで、違うのは子どもたちがいないこと。子ども役は3人の俳優が行うが、セリフはすべて決まっている。
 “第833回”“第834回”は“子ども参加型”と同じ展開なのでたいくつだが、“第835回”の途中から“アダルト編”らしい展開になって俄然おもしろくなる。世界の貧困のような社会問題がら下世話な不倫の話にストンと落とす手際が鮮やかだ。午後7時05分から8時05分まで、上演時間は約1時間。


 午後8時過ぎから約30分間、ロビーでアフタートーク。作・演出の平田オリザにたくさんの質問が出た。「サンタクロース会議」は“青年団の俳優の子どもたちに見せたいものを作りたい”として5年前に作ったもので、“アダルト編”はそのスピンアウトでブラックなものを大人向けに作った舞台だという。両方観られてよかった。
 入場料は“子ども参加型”は無料で、“アダルト編”は一般2,000円だが18歳以下は無料。観客はいずれも100名以上で、“アダルト編”には高校生が多かった。


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