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《2014.12月−4》

声明と聖歌の混交は鳥肌もの
【グレゴリオ聖歌&真言宗声明 (アルス東京)】

出演:ミラノ大聖堂聖歌隊 真言宗青教連法親会
13日(土)15:05〜17:10 アクロス福岡 シンフォニーホール 4,000円


 大人数の僧による真言宗声明もよかったが、グレゴリオ聖歌とのコラボレーションでの声の混交には鳥肌が立った。

 第一部「真言宗声明」、第二部「グレゴリオ聖歌」、第三部「グレゴリオ聖歌&真言宗声明 コラボレーションステージ」という3部構成だった。


「真言宗声明」(真言宗青教連法親会)

 ほら貝の音が響いて、豪華な僧服の僧たちが山伏姿の4人に先導されて客席後方から左右の通路を進んでくる。通路に長く並んで互いに向き合い呼びかけあうように詠じられる「庭讃」はゆったりとした調子だが、39人の僧の唱和が客席に満ちて胎に響いて心も体も解きほぐされて、声明の世界に入っていく。
 舞台には中央に小さな祭壇があって頭人が座り、その後ろに横長に僧たちが並んで客席と向かい合う。長老の合図で「散華」「唱礼」「光明真言行道」「称名礼」が僧たちのフォーメーションを若干変えながら詠じられていく。「散華」では紙で作った華が撒かれる。全員での朗誦は迫力で、長老やその他の方のソロ部分やグループが互いにかけ合いながら進めるところもある。最後は五体投地の礼で終る。

 経文に旋律をつけて唱える声明には「真言声明」と「天台声明」の2大流派があり、“ユリ”と呼ばれる装飾音型の違いがあって、「真言声明」は男性的でダイナミックだという。ゆっくりと長く引っぱる“ユリ”のビブラートは心地よくて、後発の芸能に多くの影響を与えたということを納得できる。
 真言宗青教連法親会は、九州各地より集まった真言宗の僧による会で、大きな法要のほか新作能への出演や和太鼓集団との共演などの活動をされている。上演時間40分強。

「グレゴリオ聖歌」(ミラノ大聖堂聖歌隊)

 ミラノ大聖堂聖歌隊は、大人20名と子ども35名で編成されている聖歌隊で、14世紀末に設立されたがその音楽活動は、11世紀以前のミラノ司教座大聖堂学校から始まるという。今回は大人のみ19人の編成で行われる。
 今回歌われるのは、「主の讃歌:エテルネ・レルム・コンディトル」「クリスマスのアレルヤ唱:アレルヤ-幼子が私たちのために生まれた」「クリスマスの詠唱:歓び称えあおう」など10曲。ポリフォニー音楽が行われる以前からの曲もあるのか単調に聴こえるが、ダイナミックに盛り上げるためのものではないからそれは当然か。装飾を排していかにも謹厳実直で重厚だが、聖歌とはこういうものなんだ。上演時間約35分。

「グレゴリオ聖歌&真言宗声明 コラボレーションステージ」

 聖歌隊の後ろに黄土色の僧衣の20人ほどの僧が並ぶ。指揮はグレゴリオ聖歌隊の指揮者が務める。
 1曲目が、聖歌「交唱:異邦のの者がわれに逆らいて立ち」「詩篇唱:神よ、御名によりて」と声明「露地偈」との、2曲目が、聖歌「第四ミサのキリエ」と声明「理趣経善哉譜」とのコラボ。聖歌を1フレーズ歌ったところから声明が重なりうねりのように立ち昇ってくる。聖歌が高音部を、声明が低音部を担当していて、しかもうまくハモっている。上演時間約10分。


 そのあと声明の僧たちも全員登場してカーテンコールのあと、アンコール。
 アンコール曲は、ミラノ大聖堂聖歌隊「きよしこの夜」、真言宗声明「心略漢語」、全員で「伊呂波歌」の3曲で、上演時間約10分。満足した。


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