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《2014.12月−11》

軽快でテンポよい楽しいオペラ
【オペラ「アルレッキーノ」−二人の主人を一度に持つと− (オペラシアターこんにゃく座)】

原作:カルロ・ゴルドーニ 台本・演出:加藤直 作曲:萩京子 振付:山田うん
25日(木)18:00〜21:20 福岡市立少年文化会館 大ホール 4,000円


 日本語でのオペラ上演のための工夫が生きていて、軽快でテンポよい楽しいオペラだった。

 クラリーチェは恋人シルヴィオと結婚間近。だが死んだはずのクラリーチェの婚約者フェデリーゴがやってきた。しかしそれは死んだ兄フェデリーゴに扮して恋人フロリンドを追ってやってきた妹のベアトリーチェだった。ベアトリーチェに仕えている道化のアルレッキーノは、フロリンドにも仕えて給料を2倍にしようとする。

 「二人の主人を一度に持つと」は、ヴェネツィア共和国(現:イタリア)の劇作家でリブレット作家のカルロ・ゴルドーニが1745年に書いた喜劇で、コメディア・デラルテ(仮面を使った即興喜劇)の流れを組む作品だ。
 「アルレッキーノ」は、コメディア・デラルテのキャラクターの一つで、道化役者の代名詞となっている。原作では主人公の名前は「トゥルッファルディーノ」だが、この舞台ではミラノ・ピッコロ座に倣って「アルレッキーノ」を主人公の名前にしオペラの題名にもしている。
 「二人の主人を一度に持つと」は、演出家ジョルジョ・ストレーレルによって1947年にミラノ・ピッコロ座によって復活上演された。こんにゃく座の座員は1979年から3度にわたるミラノ・ピッコロ座の来日公演を観つづけて、いつかはオペラにしたいとの思いを膨らませてきたという。この舞台は、昨年初演された。

 開幕前から幕が上がっている舞台上には、直径4、5mの低くて丸い舞台が作られている。その真上には同じような直径の丸いダブルのカーテンレールが吊られていて、そこから舞台までは広さがまちまちの3枚ほどの幕が垂れ下がっている。幕には内側に壁やドアなどが描いてあり、外側は白くて照明で色が変わる。カーテンレールの上には大きな三日月がある。
 まず楽士が4人出てきて上手のピアノのところの席に座る。楽士は、アコーディオン、クラリネット、バイオリン、ピアノ の4人だ。つぎにザンニ(進行役の道化)が4人出てきて、垂れ下がった幕を動かして開幕する。

 こんにゃく座のオペラは、大劇場の重厚なオペラとはまったく異なる。舞台装置は述べたとおりだし、衣装やメークはそれらしい格好だが派手さ重苦しさはない。俳優たちの動きにも重厚さはなくてとても軽快だ。場面転換に時間を取らないから話はさっさと進んでいくが、そのためにいちばん違うのは歌だ。
 原作が軽喜劇だからセリフが多い。そのまま歌ったのでは上演時間がいくらあっても足りないのだが、この舞台のセリフの刈り込みの度合いは普通のオペラやミュージカルに比べると圧倒的に少ない。日本語に移したらやたら音節が増えるから、セリフが多いと上演時間は延びる。そこをどうやって切り抜けているかというそのやり方が、こんにゃく座のオペラを特徴づけている。
 普通のしゃべりを入れていて、しゃべりから歌、歌からしゃべりを同じテンポに持っていってスムーズにやる。歌のテンポは会話とさほど変わらないほどに非常に速くて、まさにラップ。そんなふうだから深刻なところもしつこくは引っぱれない。全体的に軽い感じでぶっ飛ばすことになる。

 そんなふうだからオペラでありながら軽快で展開はとても速い。だから、オペラでありながらそのなかでの道化芸なども成立する。話はとても楽しいので、ゲラゲラ笑って観ていればいい。そしたら、じわじわと楽しさが伝わってきて、じわじわと胸のはなに溜まっていく。
 この舞台は福岡では1ステージ。観客は多くはなかったけれど、カーテンコールの拍手が半端なかった。


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